実存的苦痛とその対処法
今回は実存的苦痛とその対処法を取り上げます。
実存的苦痛とはスピリチュアルペインとも呼ばれ、心療内科のみならず、緩和ケアの領域でも非常に重要な考え方の一つです。

この機会に、実存的苦痛とその対処法を学んでいきましょう。
実存的苦痛は何から生まれる?
以前に全人的医療のところでも取り上げましたが、心療内科や緩和ケアでは全人的に患者さんを捕らえる考え方をします。
具体的には、各々の患者さんに身体的・精神心理的・社会的・実存的苦痛 (スピリチュアルペイン) をそれぞれ考える手法です。
このうち、実存的苦痛(スピリチュアルペイン)は「生きる意味」を根源とする悩みで、他の3つとは質がことなります。
そしてこの苦悩が生まれる原因の一つが、
『理想』と『現実』とのギャップ
と言われています。
例えば、
理想とする状態=健康
現実=不治の病
といったような感じです。
実存的苦痛をさらに詳しく見ていくと・・・時間・関係・自律存在
さらにこの実存的苦痛を分類する方法として有名なものに、村田理論があります。
村田理論では実存的な苦痛を
時間存在・関係存在・自律存在
の3つに分類します。
時間存在とは、その人の命が続いていくこと。
関係存在とは、その人が持つ関係性(人間関係)があること。
自律存在とは、その人自身の自律性が保たれること。
です。
特に終末期の患者さんなどは時間存在や自律存在が脅かされる事態になります。そういったときに家族の支え(関係存在)によって、実存的苦痛に対処できる事があります。
実存的苦痛への最良の対処・・・それはコミュニケーション!
実存的苦痛を解決するために、もちろん薬物療法や心理療法、環境調整などといった治療法も一定は有効ですが、根本的な解決にはなりえない事が多いです。
最も良い対処はコミュニケーションの力です。
人に話を聴いてもらう、だけでも少し心が楽になった経験は誰しもがお持ちだと思います。実存的苦痛はなかなか解決が難しい問題ですが、解決できなくても、その苦悩を誰かと共有するだけでも、十分にその人のケアになっているのです。