ストレスでおなかが痛い。これって病気(心身症)?

「ストレスでおなかが痛くなるんですけど・・・。これって病気ですか?」
という質問は結構うけます。

今回は具体的なエピソードから、心療内科医がどのように患者さんを診ているのかを解説していきたいと思います。

心身症の診断とは?

心身症とは、簡単に言うと「ストレスが原因の身体の病気」です。
(詳しくは「心身症とは?」をご覧ください)
しかし、実際の心身症の診断は非常に難しい。
このことは是非皆様に知って頂きたいと思います。

生きていく中でストレスが皆無という人はいないでしょう。日々の生活の中で、誰しもが何らかのストレスを抱えています。これが身体に影響を及ぼすとき、心身症の可能性を考えます。こういったような、心と身体の関係を「心身相関(しんしんそうかん)」といいます。

ただ、他の病気の診断と決定的に違うところは、ストレス→症状の関係を完全に証明することは出来ません。

具体例を挙げると、例えばおなかが痛い人に胃カメラをして胃潰瘍があったとしましょう。これは、明らかに見た目でわかりますし、「胃潰瘍」の診断に関しては、誰しもが疑いの余地はないでしょう。

ただ、これが「胃潰瘍(心身症)」であるかどうかは、どうでしょうか?例えば、本人が職場ストレスを感じていた・・・から、「胃潰瘍(心身症)」としてよいでしょか?ここの関係性を証明するにはどうすればよいでしょうか?

例えば、それまで症状が全くなかった方が、職場で配置転換があって、それ以後に症状が出だしたとしたら、その可能性は高いといえるでしょう。加えて、もしその職場を変わる、もしくは一時的に休職すること(だけ)で症状が改善すれば、「心身症」である可能性は高いかもしれません。(もちろん、胃潰瘍の場合には胃薬などの薬物療法が行われるのが通常なので、こういったことは考えにくいですが・・・)しかし、「科学的」であるかというと話は別で、かなりの確率でそうはいえるかもしれませんが、完全にそれを証明することは現実的には不可能です。

加えて、例えば胃潰瘍の場合、現在、特殊な菌(ピロリ菌)が持続的に感染していることによって胃潰瘍になりやすいことは科学的に証明されています。(ですので、ピロリ菌の除菌を行えば、胃潰瘍のリスクは下がります。)

したがって、ピロリ菌の関与、ストレスの関与、その他の様々な因子が関連して胃潰瘍という病気を引き起こします。

基本的に、心身症かどうかの判断は本人の自己申告が全てです。また心身症とするかどうかは、かなり主治医の勘と経験によるところが大きいというのが現実です。

ストレスでおなかが痛いのは、結局心身症?

加えてややこしいのが、心身症のなかでも現在の医学の検査(血液検査や画像検査)で異常が出ないことがしばしばあります。その代表例が過敏性腸症候群(ストレスでおなかが痛くなって、下痢をする病気)です。

腹痛のイラスト

先に出した例のように、明らかに胃カメラをやって胃潰瘍があれば、それが心身症かどうかに関わらず、誰が見ても「病気」と分かりやすいですよね。カメラの画像を患者さんとみれば一目瞭然です。

しかし、例えば過敏性腸症候群の場合、通常の検査(CT・大腸カメラ)などをやっても全く異常がありません。もしこれで異常があれば、逆に過敏性腸症候群ではないと診断されるくらいです。

ではどのように診断をするかというと、きちんと「診断基準」というのがあって、通常はそれに基づいて診断をします。(現在良く使われるのはローマ基準、もしくは日本消化器病学会の診断基準です)

したがって、「検査で異常がない=病気ではない」というわけではないのです。

心療内科の外来には「色々と検査をしたんですが、どこも異常がなくて・・・」という患者さんが大勢こられますが、その中でも病名がつく心身症の方は結構います。このことは是非多くの方に知って頂きたいと思います。

では、ストレスでおなかが痛い人は、みな心身症?

かというと、そうでもありません。ストレスでおなかが痛くなる、下痢をする人なんで世の中に非常に大勢います。そういう体質の方です。

これは、別におなかの症状に限らず、人前で話をするとき、テストの直前など、緊張のしやすさや身体の症状の出方は人によって様々ですよね。

なので、ストレスでおなかが痛くなりやすい体質の人は大勢いても、その中で病院に受診するほど日常生活・社会生活に影響が出る人はごく一部です。そしてその中の一部分が過敏性腸症候群(心身症)ということになります。

これは治るときにも同様で、体質まで完全に治ることはなかなか難しいです。したがって、「ストレスによって症状はでるが、日常生活・社会生活に出る影響は比較的少ない」が治療におけるゴールとなります。

それくらい、病気と健康の間ということはグレーなのだということも是非覚えておいてください。

まとめ

心身症の診断について解説しました。
心身症の診断は非常に奥深く、また主治医との話し合いと共通の理解が非常に大切です。
是非、診察場面で色々と聞いてみてください。

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