サイコオンコロジー:がん患者と家族を支えるために…
心療内科は基本的には心身症を専門にする科ですが、精神科と同様に他の病気のサポート役としての役割をすることもあります。
その代表が「がん」です。
「がん」は今や、国民の2人に1人がかかる病気で、家族も含めると、がんと無縁で一生を終える方は、ほとんどいないのではないでしょうか。
特にがん患者の精神面を支えるのが、今回取り上げる
サイコオンコロジー
です。
これは精神・心理を意味する「サイコ」とがん・腫瘍を意味する「オンコロジー」を合わせたことばです。
今回は、がんの患者さん・家族への心療内科の関わりについて解説します。

がん患者の苦痛と苦悩
がん患者さんの苦痛や苦悩は大きく分けると以下の4つに分類されます。
身体的苦痛:がんによる痛みや吐き気、だるさなど
精神心理的苦痛:不安や気持ちの落ち込み、不眠など
社会的苦痛:がんによって離職したり、収入面で低下したりすること
実存的苦痛:死ぬことへの恐怖、生きる意味、死後の世界への思いなど
※実存的苦痛は、専門的には実際は”スピリチュアルペイン”と言われますが、世間一般には”スピリチュアル”というと、若干異なるイメージを持たれることもあるので、ここでは「実存的」と表記しています
これら4つを合わせて全人的苦痛(Total painトータルペイン)と言います。
これらは相互に関係しており、例えば身体的苦痛と精神心理的苦痛は
痛い
→ 気持ちが落ち込む
→ より一層痛みを感じやすくなる
→ さらに気分がふさぎ込む
といった風に、悪循環に陥ることもしばしばです。
したがって、身体と心、両面からのアプローチが必要であり、心療内科医の出番です。
精神心理的苦痛への対応法
身体的苦痛は新しいお薬の開発などにより、ある程度上手く症状を抑えることが可能になってきました。一方で精神心理的苦痛はお薬もありますが、それだけではどうにもならないことも経験します。
加えて、軽い抑うつや不安などは、お薬を使わなくても、適切に話を聞いてもらうだけで、心が少し楽になるいったこともあります。(これを「支持的対応」といいます)
したがって、必ずしも心療内科医や精神科医でなくてもよく、臨床心理士や公認心理師、あるいは専門や認定の看護師さんなどが、同様のスキルをもって患者さんに対応することもあります。
がんの治療経過における心理的ストレス
がんの治療経過において、患者さんとそのご家族は様々な心理的ストレスを受けます。
例えば、
・がんと知らされたとき・・・
・再発を知らされたとき・・・
・治らないことを告げられたとき・・・
などです。
これらの「悪い知らせ」に直面した患者・家族に対応するスキルをサイコオンコロジーでは実践しています。
患者だけでなく家族のケアも
精神的に苦しいのは患者だけではありません。
周りの人、特に家族にも同様のケアが必要になります。患者さんだけでなく家族のケアも行うのが、サイコオンコロジーの特徴です。
患者さんと一緒に受診していただくだけのこともありますし、家族さんの気持ちがかなりしんどい場合には、患者さんとは別に診療をすることもあります。
まとめ
心療内科医がかかわるがん診療「サイコオンコロジー」についてまとめました。
心身両面からアプローチが可能な心療内科医はサイコオンコロジーでも活躍しています!