◎徹底解説◎ 線維筋痛症に効く!?漢方薬
線維筋痛症は心療内科でも時々診察する病気ですが、非常に治療が難しいことで知られています。
線維筋痛症の診断や治療をまとめたガイドラインというものがありますが、エビデンスがある(研究で明らかな有効性が示されている)漢方薬は残念ながらありません。
しかし実際には線維筋痛症に通常の治療でもなかなか症状が良うならないことが多く、そういった場合に通常の治療にプラスして(あるいは切り替えて)漢方薬を使うことはあります。
漢方薬は薬局や漢方薬局でしか買えないと思っている人もいますが、実は病院でも処方してもらえます。
今回は、比較的入手しやすい線維筋痛症に使う漢方薬を解説します!

68番:芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
まず最初に取り上げるのは芍薬甘草湯です。
名前は耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか?というのは、芍薬甘草湯は足の攣りなどによく使われる漢方薬だからです。
この攣りに対しての効果は、すなわち筋肉を和らげる作用があるためですが、これを応用して線維筋痛症に使用する場合があります。
しかし、芍薬甘草湯は長期に続けると血圧が高くなったりする副作用がありますので、使用される際には主治医とよく相談して短期間の使用に留めましょう。
1番:葛根湯(かっこんとう)
言わずとしれた超有名漢方薬 葛根湯ですね。漢方薬の中では一番有名かもしれません。
葛根湯は皆さん風邪のときに飲むものと思っておられるかもしれませんが、実は頭痛にも効果があることが知られています。
特に筋肉の凝りを伴う緊張型頭痛には使用されることが多くあり、芍薬甘草湯と同じく筋肉の緊張を和らげる作用があります。
したがって、同じように筋肉の緊張からくる痛みを主体とする線維筋痛症の場合、葛根湯が効果があることがあります。
54番:抑肝散(よくかんさん)
これまた有名な漢方薬 抑肝散です。
これは最近は認知症の心理面・行動面にに対する効果が期待されて、よくご高齢の方に処方される機会が増えてきていますが、実は不眠にも良く使える薬です。
漢方で言う「肝」というのは精神のことで、「肝」を「抑」ということで、「抑肝散」と名付けられています。
線維筋痛症の患者さんは痛みによって不眠や精神的不調をきたしていることも多く、痛みに対しての直接の効果は期待できませんが、付随する精神症状に対して使用することがあります。
25番:桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
これは女性には比較的有名な漢方薬です。
いわゆる「駆瘀血剤(くおけつざい)」という種類では最もよく使われる漢方薬です。
瘀血というのは、端的に言うと、血のめぐりが悪い状態のことです。(東洋医学的な「血」は実際には血液とは異なりますが、ココでは割愛します)
これを「駆(逐)」するのが「駆瘀血剤」です。
よく女性の冷え性などに使用される薬ですが、線維筋痛症では血のめぐりが悪いことで筋肉内に痛み・疲労物質が溜まる可能性が示唆されており、これに対して血のめぐりを改善する目的で駆瘀血剤の代表薬である桂枝茯苓丸を用いることがあります。
48番:十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
これは「血」と「気」の両方を補うことができる薬で、「気血両虚(きけつりょうきょ)」という漢方の病態に対して使う薬です。「補気薬(ほきやく)」であり「補血薬(ほけつやく)」でもあるという、最強の漢方薬と言っても過言ではありません。
この点から外科の手術後などに使われることが多いですが、線維筋痛症に対して全体を持ち上げることを期待して使用されることもあります。
まとめ
線維筋痛症に使われることがある漢方薬をまとめてみました。
最初に述べたように、漢方薬であっても線維筋痛症に特効薬はありません。
しかし、現状の治療では日常生活に支障が著しく、他の薬も試してみたいという場合には一つの選択肢にはなるかもしれません。