『自律神経失調症』は存在しない!?
「自律神経失調症で○○クリニックにかかっていて…」という会話、良く聞きますよね。
実は、この「自律神経失調症」の意味するところは、非常に様々です。
今回は、非常によく使われる「自律神経失調症」についてわかりやすく解説します。

そもそも自律神経とは?
自律神経は体のバランスを整えるために必要不可欠な神経(内分泌)機能です。
大きくは、緊張させる交感神経と、リラックスさせる副交感神経に分けられることはよくご存じかと思います。
この自律神経の作用は脳・脊髄を伝って、各内臓・器官に伝わります。
したがって、自律神経の不調では、体のあらゆる症状が出現します。
『自律神経失調症』の本当に意味…
ではよく使われる『自律神経失調症』という言葉はどういう意味でつかわれるのでしょうか?
一般には、頭痛やめまい、食思不振などの症状がありながら、検査で異常がないものを、一緒くたにまとめて『自律神経失調症』と言っていることが多いと思います。
しかし、これを心身症(ストレスに関連する体の病気)の観点からすると
頭痛 ⇒ 片頭痛(心身症)
めまい ⇒ メニエール病(心身症)
食思不振 ⇒ 機能性ディスペプシア(心身症)
などといった風に個別に分類することができます。
このように一つ一つの症状について、正しく命名することで、適切な治療が可能になることもあります。
もう一つの『自律神経失調症』…
もう一つ、『自律神経失調症』が使われる場面として、うつ病の患者さんに敢えて『自律神経失調症』という病名を伝えている場合があります。
これは、最近では減っていると思いますが、やはり「うつ病」に対する偏見などがあり、容易にうつ病という病名をつけたくない、つけられたくないという社会背景に由来するものです。
しかし、これもうつ病の治療といわゆる『自律神経失調症』の治療とでは大きく異なるので、『自律神経失調症』と診断(患者さん申告)されていながら、実際には抗うつ薬が出ているということを見かけることもしばしばあります。
まとめ
このように、一口に『自律神経失調症』といっても、その意味するところは様々です。
できるだけ、具体的な心身症の病名なのか、もしくはうつ病なのか、ということをしっかり把握していることは非常に大切です。
とはいえ、『自律神経失調症』としか言いようがない方も時におられます。
『自律神経失調症』と診断されている方は、一度主治医の先生に聞いてみてはいかがでしょうか?