とっても身近な心身症⑦アトピー性皮膚炎
ご自身が、あるいはお子さんがアトピー性皮膚炎で悩んだ(現在も悩んでいる)方は以外と多いのではないかと思います。
今回は皮膚科領域で代表的な心身症の一つである、アトピー性皮膚炎について解説します。

アトピー性皮膚炎はストレスが影響する心身症!
アトピー性皮膚炎というと、遺伝するとか、アレルギー体質がなりやすいとか、
食物アレルギーとの関係とか、様々な要因に関する話題があります。
今回は特にアトピー性皮膚炎の心身症としての部分について取り上げたいと思います。
アトピー性皮膚炎の治療に当たる医療者が参照する「ガイドライン」には、その関連について次のように述べられています。
アトピー性皮膚炎の痒みの誘発・悪化因子 として温熱,発汗,ウール繊維,精神的ストレス,食 物,飲酒,感冒などが特に重要とされる.
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018
このように、もともとアトピー性皮膚炎がある方が、精神的ストレスがきっかけとなって悪化するケースはしばしばあります。
特に代表的な心身症を世に提唱した Alexander の教科書でも、7つの代表的な心身症の一つとして、同じアレルギー性疾患の気管支喘息などと並んで、アトピー性皮膚炎が挙げられています。
アトピー性皮膚炎に対する治療の基本!ステロイド外用薬(塗り薬)
アトピー性皮膚炎に対する治療の基本は、
①薬物療法
②皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア
③悪化因子の検索と対策
です。
なかでも②に非常に重要な役割を持つのが、ステロイド外用薬(塗り薬)です。
「ステロイド」と聞くとネガティブなイメージをお持ちの方もいるかもしれませんし、(最近はそうでもないですが)かつてはアトピー性皮膚炎に対してアンチ・ステロイドのような治療を薦める方もいましたが、今は様々な研究でステロイド外用薬の有用性が証明されていますし、先のガイドラインでもまず一番最初に述べられています。
ステロイド外用薬は、医師の指導の下に使用するには、安全かつとても重要な薬です。
しかしこのステロイドの塗ることがうまくできない、あるいは止めていることでアトピー性皮膚炎が良くならない患者さんをしばしば見かけます。
このように薬剤を、患者さんが適切に使用できているかのことを『アドヒアランス』と言い、治療効果に大きくかかわってきます。
アドピー性皮膚炎は、とりわけ『アドヒアランス』が重要な病気の一つです。
※この「アドヒアランス」は以前は「コンプライアンス」と言われたりしてました。しかし「コンプライアンス」は、患者さんが医療者から(一方的に)指示され、その決定に従うようなイメージを持たれがちなこともあって、現在は、患者さんが積極的に治療方針の決定に参加し、薬剤治療に関わっていくという意味合いの「アドヒアランス」という用語が用いられることが多くなっています。
アトピー性皮膚炎に対する心身医学的治療のメリット
アトピー性皮膚炎は心身症であるがゆえに、心身医学的な治療が有用です。
ガイドラインでは以下の四点を治療上のメリットとして挙げています。
①薬物療法の検証とアドヒアランスの把握
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018
② 悪化因子としてのストレッサーの把握
③ 習慣性搔破行動
④患者教育
中でも最も大切なのは、
①の 薬物療法の検証とアドヒアランスの把握
です!
気管支喘息でも取り上げましたが、アトピー性皮膚炎もこれだけの特効薬がある現在、治りにくい一番の要因は薬がうまく使えていないことです。
心身医学的なアプローチというより、包括的な診療の一つですが、まずはその点を確認していくことが必要です。
まとめ
皮膚科領域でも心身症を扱うこともあるため、心療内科だけでなく、皮膚科医の集まりである皮膚科心身医学会という団体もあります。
アトピー性皮膚炎で治療法に困っている場合には、かかりつけの先生に一度相談してみましょう。